抗菌薬の誤用は御用です


2017.5月号


よく知られた話ではありますが、幕末に新選組二番組組長を務めた永倉新八は、虫歯を増悪させ、骨膜炎、敗血症で亡くなったといわれています。今では抗菌薬の普及もあって、虫歯で死に至るようなケースを見ることはめったにありません。当科でも歯性感染を起因とする蜂窩織炎の患者さんを治療させていただく機会はありますが、原因が除去できるまでの間、抗菌薬の力を借りることになります。以前から言われていることではありますが、その抗菌薬の使用法については気を使わなければならないと感じています。
昨年4月、抗菌薬適正使用のための提言が発表されました。抗菌薬耐性菌の拡大への対応として 「耐性菌を保菌・感染した患者から,保菌していない患者へ拡げない対策」「患者への 抗菌薬の使用を適切に管理する対策」 の2つが必要と記載されています。
常に細菌にさらされ、バイオフィルムを形成しやすい口の中を扱う歯科医師としてできることは多々あるだろうと思います。口腔外科として毎日のように手術を手掛けるうえで、手術後など抗菌薬を使用する機会も多くありますが、その使用法については常に検討が必要です。また、上記提言の中では「地域ぐるみでの耐性菌対策」も求められています。荏原病院の最も得意とするところですので連携医の先生方とも協力して取り組んでいきたいと思っております。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

参考
・「抗菌薬の適正使用に向けた8学会提言」日本化学療法学会ほか
・「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」日本化学療法学会ほか
・「抗菌薬の考え方、使い方ver.3」岩田健太郎、宮入烈 中外医学社

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